【インシュアテックよもやま話】vol.1 生成AIと保険①

insurtech

AIやビッグデータなど新しい技術を活用するスタートアップなどの新興企業が、伝統的な金融機関と協業して新しいサービスを生み出す事例が増えています。

保険業界では、こうしたサービスはインシュアテック(InsurTech/保険×技術)と呼ばれています。

保険業のライセンスを持つ保険会社と、技術を持つ新興ベンチャー(スタートアップ)企業などが協業し共創することでお客さまに新しいサービスを届けることができます。

最近では保険会社だけでなく、保険代理店とスタートアップとの協業事例も徐々に出てきています。

本シリーズでは、インシュアテックに関する最新の情報をご紹介し、保険代理店の視点で考察していきたいと思います。

1. 生成AIの登場

OpenAI社からChatGPTが公開されたのは2022年11月30日です。2023年のユーキャン新語・流行語大賞で「生成AI」がノミネートされましたが、同年は生成AIやChatGPTが大きな話題となった1年でした。

AIが人類の知能を超える技術的特異点を「シンギュラリティ」と呼びますが、ChatGPTが登場した当初は、これまではだいたい2045年くらいではないか、とされていたシンギュラリティが予想以上に早く到来するのではないか、人間のクリエイティブな仕事も近いうちにAIに置き換わるのではないか、と大きな驚きをもって受け止められました。

筆者は保険業界向けのメールマガジンに毎月1回インシュアテック関連の記事を寄稿しています。

ChatGPTが急速に広まった2023年2月の寄稿では、生成AIの将来について、次のように記しています。

「将来はエンジニアがコードを書くのではなく、一般の方でも対話をするだけでアプリケーションが作れるようになるかもしれません。」

2. 1年で大きな進化

この予想は1年たたずに実現してしまいました。OpenAIは今年11月にプログラミングの知識やスキルがなくても、ChatGPTをオリジナルのチャットボットにカスタマイズできる、「GPTs」という機能を有償ユーザーにリリースしました。

これにより、ChatGPTを使ってさまざまな目的のチャットボットを簡単に作成してネット上で公開することができるようになりました。

また、ChatGPTはこの1年の間に多くの機能が追加され、文章での会話だけでなく、マルチモーダルといって、画像やデータを入力したり、生成したりすることができるようになっています。

例えば売上データのCSVファイルをアップロードして、「分析してほしい」とリクエストする、あるいは文章でイメージを伝えて、会社のロゴなどを生成する、といったこともできるようになりました。

3. AIチャットボットが誰でも作成可能に

現在、GPTsを使って作成されたさまざまなチャットボットが公開されています。

例えば英会話を教えてくれるチャットボット、さまざまな補助金の申請方法を教えてくれるチャットボット、国会の議事録を検索してくれるチャットボット・・・。

もちろん、簡単な保険相談に応えてくれるチャットボットはすでにいくつも公開されています。

ただし、ChatGPTなどのチャット型生成AIでは、誤った情報に基づいて不適切な文章を生成してしまうハルシネーション(幻覚)と呼ばれる現象が知られています。

ChatGPTで使われている生成AI(GPT)などの大規模言語モデル(LLM)は、インターネット上に存在する膨大な情報を利用して事前学習を行っていますが、その情報のなかには誤っていたり既に陳腐化した古い情報も含まれたりしています。

このため、LLMはその仕組み上、事実でないことをあたかも事実であるかのように見せかける文章を生成することがあります。

実際の業務に生成AIを導入し、社内もしくは社外(顧客)向けのサービスを提供するためには、こうしたハルシネーションを抑制して、適切な文章が生成できるような手立てを講じる必要があります。

次回予告

次回は生成AIが保険業界(保険会社や保険代理店)でどのように活用されているのかについてみていきたいと思います。


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