保険の企業代理店とは?

企業代理店

1.企業代理店とは?

企業代理店とは、ある企業やそのグループ、またその役職員の保険契約をメインに募集するような保険代理店です。

 基本的にはある会社の子会社となっている、あるいは企業グループのシェアードサービスを提供している会社の一保険部門となっていることが多いです。

生命保険や損害保険(マリン/ノンマリン)、少額短期保険、法人や個人の保険を取り扱います。

また「企業代理店」と呼ぶ以外にも「企業内代理店」「機関代理店」「インハウス代理店」などと呼ぶことがあります。

例えば2024年に金融庁にて「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」が開催されましたが、そこでは「企業内代理店」と呼ばれていました。

区別して使用する方もいるかもしれませんが、基本は同じような意味で使われていることが多いです。

2.扱う保険の種類

企業代理店で扱う保険は、顧客となる親会社やグループ会社の事業によって扱う保険種目やその割合、金額は多岐にわたります。以下はその一部です。

 法人:生保
    損保(ノンマリン)自動車、火災、新種、傷害 
    損保(マリン)貨物、船舶
 個人:生保、自動車、火災、新種、傷害

また企業代理店がこれら全てを扱うこともあれば、例えばノンマリン部分のみ扱って、マリンは親会社が扱っていたり、社外の代理店に任せるというケースもあります。

これは企業グループの考え方によっても大きく異なります。

その他にも保険の種目ではないですが、法人やグループ役職員向けの契約形態として団体契約や団体扱契約も取り扱います。

なお、監督指針によって自己契約や特定契約の収入保険料に占める割合に制限があるため、例えば親会社の保険だけを募集していればよいということにはなりません。

3.企業代理店のメリット

企業代理店を持つことにはどういったメリットがあるのでしょうか。

メリットとしては、ある企業やそのグループ企業の保険を一手に引き受けることで、事業のリスクマネジメントに対するノウハウを蓄積できるということが挙げられます。

顧客目線では「グループ会社だからこそ変な提案はされない」という安心感が、企業代理店目線では「グループ会社だからこそ信頼される提案をしなければ」という使命感が醸成されやすいのではないでしょうか。

4.2024年の金融庁有識者会議を踏まえた企業代理店の課題

一方で様々な企業代理店が存在することもあり、2024年の金融庁有識者会議では企業代理店のあり方について課題点があぶり出されました。

大きく3つに分類でき、その対応策と合わせて記載をします。

なお課題やその対応策は「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書より抜粋し、報告書の意図を損なわない範囲で文章/論点を整理したものです。

①企業代理店の立場の不明確さ

企業代理店は保険会社の代理店であるものの、顧客企業グループの一員であるためその立場が不明確。
ただし人的・資本的関係を踏まえれば、保険契約者である企業グループの立場に立つとみられる。
そうなると損害保険会社が顧客企業グループの一員である企業代理店を適切に指導することが困難。

→企業代理店の立場を明確化した上で、企業代理店を介した顧客企業との情報共有に関する適切なルールを策定することが重要。
顧客企業側の立場に立つ企業内代理店であっても、その実務能力の向上のため、一保険代理店として適切な指導・監督を行う態勢を改めて整備すべき。

②企業代理店の実務能力

損害保険会社の役職員による代理店の業務を代行する慣行が、無償かつ継続的に実施されるなど、保険代理店としての実務能力の向上を妨げている懸念がある

→業務代行などの慣行は確実に解消する必要がある。
損害保険会社による適切な指導・監督によっても、実務能力の向上が図られず、自立も見込めない企業代理店は、代理店委託の是非を検証することを含め、企業向け保険市場の健全な競争環境を実現するために対応を検討するべき。

③競争環境の歪み

本来、実務能力の乏しい代理店は、公正な競争環境のもとでは淘汰されていくのが自然。
しかしグループ企業等への保険募集を行ってさえいれば、保険会社から一定の手数料収入を安定的に得られ、保険代理店として存続していけるのが実態。
企業向け保険市場における保険仲立人や他の保険代理店の参入の妨げになり、公正な競争が行われていないなど、企業向け保険市場の競争環境に歪みが生じているおそれがある。

→企業代理店は実務能力を高めるとともに、グループ企業内マーケットへの依存をやめ、自立した保険代理店として、保険仲立人や他保険代理店と公正な競争を行っていけるようになること、それを実現するための環境を整備していくことが重要。

さらに、企業内代理店の自立を促す観点からは、特定契約比率規制を見直すことも必要。
具体的には、比率の計算にあたって、対象保険種目等を限定する経過措置については、一定の準備期間を確保した上で、早急に撤廃するべき。
また、特定契約比率規制の対象となる「特定者」の対象範囲についても、連結決算の対象となるグループ企業の範囲全体へ拡大するなど、そのあり方を検討するべき。

なお、企業内代理店における実務能力の向上が図られ、一定程度自立が進んだとしても、 その立場が不明確であることによる競争環境の歪みは残ることとなる。
こうした歪みを是正する観点から、保険代理店の果たす役割に応じた手数料体系のあり方についても検討を続けるべきである。

このほか、企業向け保険市場の更なる発展を図る観点から、保険仲立人の活用を促進するための施策もあわせて検討を続けるべき。
他方、企業グループ外への保険募集を拡大させる方針を掲げ、自立を図ろうとする意志を持つ企業代理店も存在することにも留意する必要があり、関係者と緊密に連携しながら、その取組みを適切に進めていくことが重要。

5.今後の展望

企業代理店に限らず、保険代理店を取り巻く環境は急激に変化しています。 

上記に記載した課題以外にも、生産労働人口の減少に伴い従業員が確保できなくなることや、デジタル化/自動化の遅れにより世の中に必要とされなくなる可能性も考えられます。

今後は既存顧客の契約の深耕に加えて、企業グループ外への価値提供や、環境変化に即座にキャッチアップすることが求められています。

併せて事務や営業の効率化や業務を抜本的に見直すようなDXも促進することが必要です。

企業代理店1社だけのリソースには限りがあります。

自社だけでなく保険会社や他の保険代理店、InsurTech企業、スタートアップ企業、その他金融業界とも関わりながら、これまでのどちらかと言うとインナーへ向きがちな視点を外部に向け、顧客起点で企業としての価値を高めることが変化の激しい時代に必要とされるのではないでしょうか。

もちろん言うは易しで、各社で置かれている状況も異なりますし時間もかかるでしょう。

またそれを熱意ある個人が推し進めるだけとなるとその人がいなくなると失速してしまうこともあります。そのため熱意ある個人に加えて、それを推し進めるための繋がり・組織も必要になると考えられます。

本メディアでは主に「企業代理店」について、保険業界やその他の業界の皆様と一緒にどのような未来を築いていけるかを考察するための情報発信をしていきたいと思います。

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