1.カスタマーハラスメントとは
顧客による迷惑行為、カスタマーハラスメント(カスハラ)は
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
とされています。
また企業と個人顧客の間で発生するイメージが強いですが、企業間においても受注側・発注側など、力関係の差により発生することがあります。
カスハラの話題はメディア等でも以前から取り上げられており、こうしたカスハラをめぐる状況を見ていきたいと思います。
2.企業間でのカスハラ
企業間でのカスハラを以下3つに分類しました。
正当な理由のない過度な要求
契約内容を超える過剰な要求や、制度上対応できないことを求めるなど、取引関係上断りにくい状況で無理な要求を強いる行為があげられます。
このような行為は、下請法に抵触する可能性があります。
暴言・脅迫
有利な立場を利用して、大声や暴言で取引先を責めたり、威圧的かつ脅迫的なメールを送ったり、物を壊すといった発言や、SNSへの暴露をほのめかす脅しがあげられます。
これらは、脅迫罪、恐喝罪、名誉毀損罪、侮辱罪などにとわれる場合があります。
また、そのような社員がいることは、企業のレピュテーションリスクにもつながります。
取引先社員に対するセクハラ行為
取引先の特定の従業員につきまとったり、繰り返し電話をかけてきたり、わいせつ行為や盗撮をおこなう場合などがあげられます。
「取引先との関係を壊さないために」」と泣き寝入りすることがないよう、企業としても相談窓口の設置や、カスハラを受けた際の対応方法を決めておくことが必要です。
3.法的整備
職場のハラスメント対策として、2019年5月に改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)が成立しパワハラ防止措置が事業主に義務付けられました。
大企業は2020年6月から、中小企業も2022年4月から義務化されたのはまだ記憶に新しいところです。
また、企業間のカスハラを巡る実際の裁判では、カスハラを不法行為と認める例が出ており、その中では被害者の勤務先も法的責任を問われています。
これは、勤務先の企業側は対策が取れたのにそれを怠ったことに対して、安全配慮義務違反が認められた形となったものです。
こうした流れを受けて、東京都では2024年10月に全国初のカスハラ防止条例が成立し、2025年4月1日から施行されることが決まっています。
4.加害者にも被害者にも
一般的に見て昨今のハラスメント行為は、誰しもが加害者にも被害者にも成り得ると言え、カスハラ問題に関して言えば、それぞれに以下のような法的責任が問われることとなります。
担当者:不法行為責任
企業:使用者責任
企業:安全配慮義務違反
JR西日本が公表したカスハラに対する基本方針の中で、顧客からのカスハラへの対応策に加え、自社従業員が取引先に対しカスハラを行わないよう啓発していく姿勢も打ち出しています。
今後は従業員を被害から守る取り組みに加え、 加害者を出さない対策も大切になってくることでしょう。
5.雑感
2024年の金融庁有識者会議にても保険会社から代理店への過度な便宜供与が問題になりました。
「損保の常識、世間の非常識」という言葉がどこかで聞かれましたが、これまでの慣行や当たりまえにおこなってきたことを、改めて考え直す時期が来ています。
まずは足元で、日頃の保険会社とのコミュニケーションにハラスメントに該当するような言動がないかどうかなど、注意と意識を向ける必要があると感じます。
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