企業代理店におけるシステムリプレイス事例

システム

企業代理店におけるシステムリプレイスの流れを、筆者の経験した事例を元に説明していきます。

企業代理店における代理店システム事情については以下記事を参照ください。
企業代理店におけるシステム事情 | 企業代理店port (kigyodairiten-port.com)

1.CRMシステムリプレイスのきっかけ

筆者が所属している会社(以下M社)において、現行システムをリプレイスするきっかけとなったのはEOS(End of service)の到来でした。

保守期限が切れた古いシステムを使い続けるとセキュリティ上問題があります。
EOSの3年半ほど前から検討を開始し、ベンダー選定までに1年半、ベンダー選定後、利用開始までに1年ほど要しました。

2.旧システムにおける課題

会社によって事情はかなり異なるかと思いますが、事務・システムの刷新にあたっては、ユーザビリティ、コスト、改修の柔軟性、現場への影響、親会社の方針、データ活用の必要性、等をふまえて、総合的に判断する必要があります。

そのためM社では事務・システム刷新にあたり全社プロジェクトを立ち上げて、まずは現行の事務・システムの運用上の課題を洗い出しました。

M社においては以下のような課題がありました。

  • 経営・管理職層の事務・システムに対する理解が不十分であった
  • 情報が一元管理されていない
  • システム導入時の開発負荷と初期費用が大きく、保守費用もそれなりにかかる
  • システム改修する際に時間とコストを要する
  • ユーザビリティが悪く、細かな使い方を知らないと得たい情報に到達できない
  • データを活用するという発想がそもそもなかった

3.新システムのあり姿

事務・システム刷新においては、短期的な視点と中長期的な視点が相反することが多いです。

短期的な視点では、現行の運用を温存した方が現場の混乱はなく、難しい稟議も取る必要がないため、対応事項を最小限に抑えることができます。

中長期的な視点では、テクノロジーの力を借りて業務を効率化し、少ない人数で運用できるようにすべきですが、新システムを導入して運用を変える時に、現場の仕事が一時的に増えて混乱(運用が安定してくれば業務量は削減)が生じ、かつ稟議の取得が現状維持よりも難しくなることが予想されます。

ちなみに代理店システムを刷新する場合、以下のような点が懸念されました。

  • システム変更時、現場に負担がかかる
  • 運用が変わって営業現場に混乱が生じる
  • 経営陣や親会社の承認を取り付けるハードルが高くなる
  • システムを理解している人が少人数である
  • 現行システムは使いづらいが、どうすれば使いやすくなるのか分からない
  • 要件定義が難しく、時間も要する
  • どのくらいの費用が必要になるのか分からない
  • システム導入が失敗して顧客に迷惑をかけないか心配である

上記のような懸念がありましたが、世の中は急速に変化しており、短期的な視点だけでは会社の存続は難しく、今のタイミングがデジタル化を推進するラストチャンスであると認識して、ゼロベースで次世代システム構築の検討を進めました。

4.システムリプレイスまでの手順

社内では既存ベンダーの後継システムに移行したほうが現場の混乱を招かずに済むという意見と、これを機にデータ活用を念頭に置いた次世代システムの構築を目指すべきという意見が併存していたため、既存ベンダーを含む4社のシステムの当社実務への適合性を比較してベンダーを選定することにしました。

客観性を持たせるため国内大手コンサルティング会社の協力を得ることにしました。

発生するコンサルティングフィーは当社の規模の代理店にとっては決して安くはない金額でしたが、中長期的な観点でシステムを選定することと、関係者の納得感を醸成することを優先しました。

2022年1月に次世代システム構築推進プロジェクト(メンバー:役員、経営企画部、営業推進部、コンサルタント、等)を立ち上げて、6月までの半年間、検討フェーズ(①社内システム課題把握→②解決策整理→③RFI〔情報提供依頼書〕提示→④RFP〔提案依頼書〕提示→⑤コンペティション→⑥ベンダー決定)を推進しました。

プロジェクトは以下の点に留意して進めていきました。

  • 経営・管理職層の主体的な関与
  • 客観的な比較検討
  • 株主・経営層への丁寧な説明
  • 現場の理解促進

5.ベンダーの決定

比較軸として、外部サービスとの接続、将来性、拡張性、使いやすさなど幅広い項目を選定し、M社とコンサルティング会社が各項目について三段階のポイント評価をそれぞれ行い、最も高いポイントを示したシステムを採用することにしました。

最終的にベンダーはSaaS型でシステムを提供している会社に決めました。
選定理由は以下のとおりです。

  • 初期投資が少額で済む
    ( オンプレミス型のシステムはパッケージを購入するとともに導入時にカスタマイズを施すことが多く、導入初期段階でまとまった支払いが必要で、かつ一定の保守費用の支払いも発生する。一方、SaaS型システムは費用が平準化されており、初期投資が少額で済む)
  • 追加費用なしで、制度変更等を踏まえたシステム改修が随時行われる
  • 優秀なエンジニアが揃っており、テクノロジーの進歩にタイムリーにキャッチアップしている
  • 習熟していなくても直感的に操作することができる。

6.導入フェーズ

導入フェーズ(2022年8月~2023年7月)では、経営企画部門が全体統括を行い、営業部門、コーポレート部門の担当者もメンバーに加えて導入を推進しました。

具体的な対応としては、利用契約を締結する、デモ画面で使い方を覚える、実務とシステムのギャップを調整する、現場の意見を集約してベンダーに情報をフィードバックする、データ移行する、といったことを行いました。

導入負荷に関しては、SaaSシステムを導入したので、業務フローをシステムに合わせる部分が一定発生します。

一方でユーザーリクエストに応じた開発も一部行っていただけるので、導入フェーズにおいてもベンダーとの協議は継続的に行われます。

その他、システム移行時に新旧システムの並行稼働が発生し、一時的に現場の業務負荷は増加しました。データ移行対応についても一定の業務負荷が発生しました。

7.プロジェクト終了後に感じたこと

2023年8月より新システムの利用を開始しましたが、導入してから1年が経過し、徐々に習熟度が上がってきています。

改めてプロジェクトを振り返ってみると、最大のポイントは、経営陣、管理職層、現場担当者という3つの層の意識レベルを合わせることであったと思います。

M社では管理職層が発案者でした。

経営層の説得は、中期経営計画策定の観点から、環境変化(特にデジタル化の進展)の認識合わせを、丁寧に時間をかけて行いました。

また、システムベンダーの選定において、第三者を入れた客観的な目線での比較検討を行ったことで説得力を持たせることができました。

現場の混乱を最小限に止めるために、早い段階から事務業務のリーダー(現場担当者)にもプロジェクトチームに参加してもらいましたが、現場のキーマンが賛同してくれたのは非常に大きかったと認識しています。

他社のお話を色々とお聞きしていると、3つの層の意識レベルが合わずにスタックしているケースが結構あります。最後は発案者の執念が変革のよりどころになるのかもしれません。

8.さいごに

企業代理店におけるシステムリプレイスは一筋縄ではいきません。

システムリプレイスを検討している/推進している皆さまにとって、参考になる部分が少しでもあれば幸いです。

また詳細をお話することも可能ですので、お気軽にお問い合わせください


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