企業代理店におけるシステム事情

システム

保険代理店では、非常に多くの顧客情報や契約情報を取り扱っています。

その情報はExcelで管理している場合もあれば、保険会社システムを利用したり、また保険代理店で独自にシステムを構築し管理している場合もあります。

システムでは顧客管理や契約管理にとどまらず、意向把握の記録、保険料精算業務にも利用しているケースが多いです。

ここでは企業代理店において独自システムを使う理由やシステム開発事情についてみていきます。

企業代理店が独自システムを使う理由

企業代理店が独自システムを使う理由は、簡単に言えばそれが業務の効率化につながるからです。

各保険会社は、契約・顧客管理システムを開発し、代理店に提供しており、多くの代理店が利用していますが、当然のことながら、A保険会社のシステムではA保険会社の、B保険会社のシステムではB保険会社の契約・顧客情報しか基本的に閲覧・計上等ができません。

これらのシステムは自社の専属または自社商品を中心に販売している代理店を想定した設計になっています。

多数の保険会社の商品を取扱っている乗合の企業代理店の場合、保険会社のシステムを利用しようとすると取引している保険会社の数だけシステムにログインしないといけなくなり、事務が煩雑になります。
例えば6社の保険会社と取引をしている場合、6社それぞれのシステムにログインして事務処理を行うことになります。

各社の契約情報を名寄せして一覧で表示することができる無料のシステムもありますが、顧客対応の履歴や、意向把握の記録を残す機能が装備されていません。

こういったことからも多数の保険会社の商品を取扱っていて、かつ比較的規模の大きい乗合代理店においては、異なる保険会社の契約・顧客を一元管理できるシステムを構築しているケースがあります。

システム開発と保守対応

これまで保険代理店システムはオンプレミス(注)で構築することが多数派でした。
オンプレミスシステムの場合、通常はパッケージソフトを購入し、それにカスタマイズを加えて、自社の事務フローに合わせたシステムを開発します。

(注)システムの稼働やインフラの構築に必要となるサーバーやネットワーク機器、あるいはソフトウェアなどを自社で保有し運用するシステムの利用形態

開発したシステムは未来永劫そのまま利用できるわけではなく、サーバーの運用、バグの改修、バージョンの更新等を行うため、ベンダーと保守契約を締結します。

パッケージソフトや開発費の金額は億円単位になることもあり、導入時に纏まった金額を支払い、その後開発費用の15~20%程度を保守費用として毎年ベンダーに支払って、システムのメンテナンスを行ってもらう形が一般的です。

大きな改修を行う場合には、再度開発の業務委託契約を締結して開発費を支払い、追加開発分の保守費を支払うことになります。

SaaSとオンプレミス

最近はSaaS型の保険代理店システムも登場しています。

いわゆるサブスクリプションモデルのサービスですが、開発・保守という契約形態ではなく、利用開始時から定額の利用料を支払います。
システム上の必要なアップデートは利用料の範囲内で行われます。

SaaSの基本的な考え方としては、事務フローに合わせてシステムを開発するのではなく、SaaSが提供するシステムに合わせて事務フローを構築するということになります。

初期投資がオンプレミスの場合と比べて低廉であることや、アップデート費用が利用料に含まれており、継続的にアップデートされるというメリットがあります。

ちなみにアップデートについては、法制度の改正や世の中の技術革新等にキャッチアップするため、あるいはSaaSベンダーが様々なユーザーからの意見を聴取して、必要なシステム改修を行います。

SaaSシステムのメリットは、支払う費用が平準化しているため、導入時に纏まった金額を支払わなくて済む点の他、必要なシステム改修が自動的に行われること、業務効率化につながる(SaaSベンダーが様々な保険代理店と協議し、ベストプラクティスと判断した形に収斂していくため、自社運用をSaaSシステムの仕様に合わせていくことは、結果として必要でない業務をそぎ落とすことになる)といった点などが挙げられます。

デメリットとしては、SaaSシステムの仕様に合わせて自社の運用を変更することになるので、現場の混乱や、運用変更の負荷が一定発生することなどが挙げられます。

一方、オンプレミスのメリットとしては、カスタマイズ性が高く、自社の運用に合わせてシステムを構築できるといった点が挙げられますが、デメリットとしては導入時の金銭的負担が大きいこと、改修の柔軟性が低いといったことが挙げられます。
特にカスタマイズをすればするほど導入時の初期費用は高くなります。


企業代理店におけるシステムリプレイスの流れを、筆者の経験した事例を元に説明する記事も公開しています。
企業代理店におけるシステムリプレイス事例 | 企業代理店port (kigyodairiten-port.com)

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